JohnstoneのTopological ToposにおけるGrothendieck位相とカノニカル位相の厳密な考察

1. 導入

本稿の目的は、P. T. Johnstoneによる1979年の画期的な論文 "On a Topological Topos" における圏 $\Sigma$ とその上のGrothendieck位相の構成を端緒として、表現可能関手 (representable functor) を層化するカノニカル位相 (canonical topology) の一般論、およびコンパクトHausdorff空間や超不連結 (extremally disconnected) コンパクトHausdorff空間の圏への応用について、一連のチャットで得た数学的結果を完全にself-containedな形で漏れなく記述し、行間を埋めることである。

Johnstoneの動機は、位相空間と連続写像の圏 $\mathfrak{T}$ がデカルト閉性や適切な商の振る舞いを持たない(「行儀が悪い」)という問題を解決するため、適切な性質を持つ小さな圏上の層の圏(トポス) $\mathcal{E}$ を構成し、そこに位相空間を埋め込むことであった。本稿では、その基礎となる圏 $\Sigma$ 上の位相 $J$ の定義とGrothendieck位相の公理の検証から始まり、普遍的有効全射的 (universally effective-epimorphic) なふるいによるカノニカル位相の特徴付け、さらには圏 $\mathbf{CompHaus}$, $\mathbf{Stone}$, $\mathbf{EDCompHaus}$ におけるカノニカル位相の幾何学的表現までをフルな証明とともに解説する。

2. 圏 $\Sigma$ と位相 $J$ の定義

Johnstoneの論文において、Topological Toposのベースとなるサイト (site) として圏 $\Sigma$ が定義される。圏 $\Sigma$ は、位相空間と連続写像の圏 $\mathfrak{T}$ の充満部分圏 (full subcategory) であり、以下の2つの対象のみから構成される。

この圏 $\Sigma$ の上に、標準的 (canonical) なGrothendieck位相 $J$ を定義する。論文のProposition 3.4において、対象 $1$ および $N^+$ 上の被覆ふるい (covering sieve) は以下のように構成されている。 自然数の無限部分集合 $T \subset N$ に対して、像が $T \cup \{\infty\}$ となる一意の順序保存モノ射(単射)を $f_T: N^+ \to N^+$ とする。

(位相 $J$ の定義)

Proposition 3.4 の証明の行間補足($J$ がGrothendieck位相であること)

論文中では、この $J$ がGrothendieck位相の公理(最大ふるい、引き戻しの安定性、局所性)を満たすことの証明が極めて簡潔に済まされている。ここではその行間を完全に埋める。

1. 最大ふるいの公理の検証:
各対象の最大ふるいが必ず被覆ふるいに含まれることを示す。対象 $1$ については定義より自明である。対象 $N^+$ の最大ふるい $t_{N^+}$ を考える。$t_{N^+}$ は $N^+$ へ向かうすべての射を含むため、すべての点 $1 \to N^+$ を含み条件(i)を満たす。また任意の $T \subset N$ に対して $U=T$ ととれば、$f_T \in t_{N^+}$ であるから条件(ii)も満たす。よって $t_{N^+} \in J(N^+)$ である。

2. 安定性の公理 (pullback-stability) の検証:
$R \in J(N^+)$ とし、任意の射 $g: N^+ \to N^+$ による引き戻し $g^*(R)$ が再び $J(N^+)$ に属することを示す(対象 $1$ からの射は定数写像になるため、非自明なのは $N^+$ からの射のみである)。
・条件(i): 任意の点 $x: 1 \to N^+$ をとる。合成 $g \circ x$ は $1 \to N^+$ の点であるため、仮定より $g \circ x \in R$ である。引き戻しの定義から $x \in g^*(R)$ となり、条件(i)を満たす。
・条件(ii): 無限部分集合 $T \subset N$ をとり、その像 $g(T)$ が無限集合か有限集合かで場合分けする。
ケースA($g(T)$ が無限の場合):仮定(ii)より、$g(T)$ の中に $f_S \in R$ となる無限部分集合 $S \subset g(T)$ が存在する。$U = T \cap g^{-1}(S)$ とおくと、$U$ も $T$ の無限部分集合である。合成射 $g \circ f_U$ は $S$ の包含射 $f_S$ を経由する(すなわち $g \circ f_U = f_S \circ h$ と書ける)。ふるい $R$ は右合成で閉じているため $g \circ f_U \in R$ となり、引き戻しの定義より $f_U \in g^*(R)$ である。
ケースB($g(T)$ が有限の場合):鳩の巣原理により、$g(T)$ のある点 $y$ の逆像 $g^{-1}(y) \cap T$ は無限集合である。これを $U$ とおくと、合成 $g \circ f_U$ は点 $y: 1 \to N^+$ を経由する定数写像となる。仮定(i)より $y \in R$ であるため、$g \circ f_U \in R$ となり $f_U \in g^*(R)$ を得る。

3. 局所性の公理 (transitivity) の検証:
$R \in J(N^+)$ であり、別のふるい $S$ について「$R$ に含まれる任意の射 $h$ について $h^*(S)$ が被覆ふるいになる」と仮定する。このとき $S \in J(N^+)$ を示す。
・条件(i): 任意の点 $x: 1 \to N^+$ は仮定より $R$ に属する。したがって $x^*(S) \in J(1)$ である。$J(1)$ は最大ふるいしかないため $\text{id}_1 \in x^*(S)$ である。これは $x \circ \text{id}_1 = x \in S$ を意味し、$S$ が条件(i)を満たすことがわかる。
・条件(ii): 任意の無限部分集合 $T \subset N$ をとる。$R \in J(N^+)$ より、$f_U \in R$ となる無限部分集合 $U \subset T$ が存在する。仮定より引き戻し $f_U^*(S)$ は $J(N^+)$ に属する。$f_U^*(S)$ は条件(ii)を満たすため、自然数全体 $N$ に対して適用すると、$f_W \in f_U^*(S)$ となる無限部分集合 $W \subset N$ が存在する。引き戻しの定義より $f_U \circ f_W \in S$ である。ここで2つの単射の合成 $f_U \circ f_W$ は、$U$ の部分集合 $f_U(W)$ を像とする単射 $f_{f_U(W)}$ と等しい。$f_U(W)$ は $T$ の無限部分集合であるため、$S$ は条件(ii)を満たす。

3. 普遍的有効全射的ふるいとカノニカル位相

JohnstoneのProp 3.4の後半、およびProp 3.5の真の目的は、上で定義した位相 $J$ が圏 $\Sigma$ 上のカノニカル位相 (canonical topology) $J_{can}$ と完全に一致することの証明である。カノニカル位相は「普遍的有効全射的 (universally effective-epimorphic)」なふるいによって特徴付けられるため、まずこの一般論の定義と証明を書き下す。

(普遍的有効全射的ふるい) 圏 $\mathcal{C}$ の対象 $X$ 上のふるい $R$ が有効全射的 (effective-epimorphic) であるとは、任意の対象 $Z$ に対して、表現可能関手 $\text{Hom}_{\mathcal{C}}(-, Z)$ が $R$ に対して層の公理(貼り合わせ条件)を満たすことをいう。 すなわち、$R$ 上で適合する任意の写像の族(互いに可換になるような $\{ h_f: \text{dom}(f) \to Z \}_{f \in R}$)が与えられたとき、それらが一意な射 $k: X \to Z$ を経由して分解される($X$ が $R$ から作られる図式の余極限になる)ことである。
また、ふるい $R$ が普遍的 (universally) であるとは、任意の射 $g: Y \to X$ による引き戻し $g^*(R)$ が、対象 $Y$ 上で再び有効全射的になることである。

定理 3.1(カノニカル位相と普遍的有効全射の一致)

すべての表現可能関手を層にする最大のGrothendieck位相であるカノニカル位相 $J_{can}$ を構成する被覆ふるいの集合は、普遍的有効全射的なふるいの集合と完全に一致する。

「普遍的有効全射的なふるい」の集合を $J_{uee}$ と表記する。
ステップ 1: $J_{can}(X) \subset J_{uee}(X)$ の証明
$R \in J_{can}(X)$ とする。$J_{can}$ はGrothendieck位相であるため引き戻しの公理を満たし、任意の射 $g: Y \to X$ について $g^*(R) \in J_{can}(Y)$ である。カノニカル位相の定義より、任意の表現可能関手 $\text{Hom}_{\mathcal{C}}(-, Z)$ は $J_{can}$ に対して層となるため、$g^*(R)$ 上で一意な貼り合わせが可能である。これは $g^*(R)$ が有効全射的であることを意味する。任意の引き戻しについて成り立つため、$R$ は普遍的有効全射的であり、$R \in J_{uee}(X)$ が示された。

ステップ 2: $J_{uee}(X) \subset J_{can}(X)$ の証明
これを証明するには、$J_{uee}$ 自身がGrothendieck位相の公理を満たすことを確認すればよい。
・最大ふるいの公理: 最大ふるい $t_X$ は恒等射 $\text{id}_X$ を含むため自明に余極限となり、任意の引き戻しも最大ふるいになるため $t_X \in J_{uee}(X)$。
・引き戻しの公理: $R \in J_{uee}(X)$ に対して、任意の射 $g: Y \to X$ による引き戻し $g^*(R)$ を考える。さらに任意の射 $h: Z \to Y$ で引き戻すと $h^*(g^*(R)) = (g \circ h)^*(R)$ となる。$R$ は普遍的であるため、この合成射による引き戻しも有効全射的である。よって $g^*(R) \in J_{uee}(Y)$ である。
・局所性の公理: $R \in J_{uee}(X)$ とし、別のふるい $S$ について「任意の $f \in R$ に対して $f^*(S) \in J_{uee}(\text{dom}(f))$」であると仮定する。有効全射性による余極限の貼り合わせ定理(普遍的な図式の糊付け)を用いると、$R$ 全体が余極限であり、かつ各 $f$ 上で $f^*(S)$ が余極限であるため、それらを合成した $S$ 自身も $X$ を余極限として与える。この性質は任意の引き戻しで保たれるため、$S \in J_{uee}(X)$ である。
以上より $J_{uee}$ はGrothendieck位相であり、その定義($id^*(R)=R$ が有効全射的)からすべての表現可能関手が層となる。カノニカル位相 $J_{can}$ はそのような最大の位相であるため、$J_{uee} \subset J_{can}$ が導かれる。結論として $J_{can} = J_{uee}$ である。

$J = J_{can}$ の証明の行間補足

論文における Lemma 3.1〜Corollary 3.3, Proposition 3.5 を通じて、$J = J_{can}$ が証明される。

1. $J_{can} \subset J$ の証明の補足(Lemma 3.1, 3.2, Cor 3.3):
$R \in J_{can}(N^+)$、すなわち $R$ が普遍的有効全射的であると仮定する。
・条件(i)の導出 (Lemma 3.1): もしある点 $x: 1 \to N^+$ が $R$ に含まれないとすると、引き戻し $x^*(R)$ には $\text{id}_1$ が含まれず、$1$ 上の空ふるいになる。空ふるいが全射的になるのは対象が始対象のときのみであるが、$1$ には射が多数存在するため始対象ではなく、矛盾する。よってすべての点は $R$ に含まれる。
・条件(ii)の導出 (Lemma 3.2, Cor 3.3): $R$ の射がすべて有限像しか持たないと仮定する。このとき $N^+$ の有限部分空間は離散位相となるため、集合論的な写像 $\alpha(n)=n, \alpha(\infty)=0$ を各 $g \in R$ に合成した $\alpha \circ g$ はすべて連続写像($\Sigma$ の射)となる。これらは $R$ 上で適合族をなすため、有効全射性から一意な連続写像 $f: N^+ \to N^+$ に拡張されねばならないが、写像としては $f=\alpha$ とならざるを得ず、$\alpha$ は $\infty$ で不連続であるため矛盾。よって無限の像を持つ射 $f_T$ が必要である。普遍性を用いることで、任意の $T$ についてこれが言え、条件(ii)が導かれる。

2. $J \subset J_{can}$ の証明の補足 (Prop 3.5):
位相 $J$ の下で、表現可能関手 $h_X = \text{Hom}_{\Sigma}(-, X)$ が層になることを示す。これは対象 $X$ が部分列空間 (subsequential space) の公理を満たすことと同値である。 $R \in J(N^+)$ 上で適合する写像の族 $\{g_f\}_{f \in R}$ が与えられたとする。条件(i)によりすべての点 $1 \to N^+$ が $R$ に入るため、族は点列 $(x_n)$ と候補極限 $x_\infty$ の行き先を決定する。条件(ii)により、任意の無限部分列 $T$ に対して、さらに無限部分列 $U \subset T$ が存在し、$f_U \in R$ となる。これは「いかなる部分列をとっても、その中に $x_\infty$ に収束する更なる部分列が含まれる」という情報が適合族に内在していることを意味する。部分列空間の公理(iii)により、これは元の点列自身が $x_\infty$ に収束すること(すなわち全体への一意の連続写像 $N^+ \to X$ の存在)を保証する。 よって $h_X$ は $J$ に対して層となり、カノニカル位相の最大性から $J \subset J_{can}$ である。

4. カノニカル位相の最大性がもたらす利点と「自明な位相」

なぜ「表現可能関手が層になる」という条件だけでなく、そのような「最大の」Grothendieck位相を採用するのか。最大性の利点は、トポス $\mathbf{Sh}(\mathcal{C}, J)$ の中に元の圏 $\mathcal{C}$ を米田埋め込みで埋め込んだ際、元の圏が持つ幾何学的な貼り合わせの情報を一切破壊せずに保持できる点にある。

具体例:線分 $I$ から円周 $S^1$ への貼り合わせ

コンパクトHausdorff空間の圏 $\mathbf{CompHaus}$ を考える。閉区間 $I=[0,1]$ の両端を貼り合わせて円周 $S^1$ を作る商写像 $q: I \to S^1$ は普遍的有効全射的(余極限)である。

すなわち、最大性とは、元の圏の「有効全射」を一つ残らず被覆として認定することで、幾何学的に無意味な不純物を極限まで削ぎ落とし、恣意性を排除して固有のトポロジーを抽出するための不可欠な条件である。

「自明な位相」がGrothendieck位相になることの証明

上で言及した「自明な位相 (trivial topology)」が、実際にGrothendieck位相の公理を満たすことを証明する。自明な位相とは、各対象 $X$ において、最大ふるい $t_X = \text{Hom}(-, X)$ のみからなる族 $\{t_X\}$ を被覆ふるいとするものである。

$J_{\text{trivial}}(X) = \{t_X\}$ とする。
1. 最大ふるいの公理: 定義より $t_X \in J_{\text{trivial}}(X)$ は明らかである。
2. 安定性の公理: $S \in J_{\text{trivial}}(X)$ とし、任意の射 $f: Y \to X$ で引き戻す。$S=t_X$ であるため、引き戻しは $f^*(t_X) = \{ g: Z \to Y \mid f \circ g \in t_X \}$ となる。射の合成 $f \circ g$ の余域は常に $X$ となるため、任意の $g$ について $f \circ g \in t_X$ は自動的に満たされる。よって $f^*(t_X)$ は $Y$ を余域とするすべての射の集合 $t_Y$ と一致し、$t_Y \in J_{\text{trivial}}(Y)$ を満たす。
3. 局所性の公理: $S \in J_{\text{trivial}}(X)$(すなわち $S=t_X$)とし、任意の $f \in t_X$ について $f^*(R) \in J_{\text{trivial}}(\text{dom}(f))$ と仮定する。この仮定は $\forall f \in t_X, f^*(R) = t_{\text{dom}(f)}$ を意味する。$t_X$ には恒等射 $\text{id}_X$ が含まれるため、$f=\text{id}_X$ とすると、$\text{id}_X^*(R) = t_X$ となる。恒等射による引き戻しは元のふるい $R$ そのものであるため $R=t_X$ となり、$R \in J_{\text{trivial}}(X)$ が成立する。
よって自明な位相はGrothendieck位相の公理をすべて満たす。

5. $\mathbf{CompHaus}$ および $\mathbf{Stone}$ のカノニカル位相

コンパクトHausdorff空間の圏 $\mathbf{CompHaus}$、および完全不連結コンパクトHausdorff空間(Stone空間)の圏 $\mathbf{Stone}$ におけるカノニカル位相は、直観的で幾何学的な特徴付けを持つ。

$\mathbf{CompHaus}$ および $\mathbf{Stone}$ のカノニカル位相を構成する被覆ふるいは、「有限結合全射族 (finite jointly surjective families)」 によって生成されるふるいである。 すなわち、有限個の連続写像の族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i=1}^n$ であって、$\bigcup_{i=1}^n f_i(X_i) = X$ を満たすものを含む。
有限結合全射族が有効全射的であること:
結合全射族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i=1}^n$ が与えられたとする。これらの定義域の有限非交和(直和) $Y = \coprod_{i=1}^n X_i$ をとる。対象が有限個であるため、コンパクト性は保たれ、$Y$ は再び $\mathbf{CompHaus}$(または $\mathbf{Stone}$)の対象となる。族から誘導される自然な射 $p: Y \to X$ は全射連続写像となる。位相空間論の定理より、コンパクト空間からHausdorff空間への連続全射は閉写像 (closed map) であり、したがって商写像となる。商写像であるということは、空間 $X$ が $Y$ を同値関係($p$ の核対)で割った余極限として振る舞うことを意味し、これは族 $\{f_i\}$ が有効全射的であることを意味する。この性質は任意の引き戻しで保たれるため、普遍的有効全射となる。

無限被覆による不連続関数の構成(有限性の要請):
もし有限結合全射族を含まないふるい $R$ を被覆と仮定すると、$R$ に属する射の像(コンパクト空間の連続像なので閉集合)を無限個集めても $X$ を覆い尽くせないか、あるいは有限部分被覆を持たない。このような状況下では、各々の閉集合上では連続であるが、$X$ 全体では不連続になるような関数が構成可能となる(弱位相を持たないため)。これらの関数は $R$ 上で適合族をなすにもかかわらず、全体への連続関数に貼り合わせられないため、表現可能関手が層の公理を満たさない。よって被覆ふるいは必ず有限結合全射族を含まなければならない。

6. 超不連結空間の圏 $\mathbf{EDCompHaus}$ におけるカノニカル位相

対象の位相的性質を極端に良くした、超不連結 (extremally disconnected) コンパクトHausdorff空間の圏 $\mathbf{EDCompHaus}$ について考察する。位相空間 $X$ が超不連結であるとは、任意の開集合の閉包が再び開集合(したがってclopen)になることをいう。

直和射を巡る論理的誤謬の検証

これまでのチャットにおいて、私は「$\mathbf{EDCompHaus}$ におけるカノニカル位相は自明な位相になる」という誤った証明を提示した。その誤謬の論理は以下の通りであった。
【誤った論理】有限結合全射族 $\{f_i\}$ を含むふるい $R$ について、直和からの全射 $p: \coprod X_i \to X$ は、$R$ が族 $\{f_i\}$ から作られているため $R$ に含まれる。空間 $X$ は射影的であるから $p$ には断面 $s$ が存在し、$p \circ s = \text{id}_X$ となる。ゆえに $\text{id}_X \in R$ となり、$R$ は最大ふるいとなる。

【誤謬の指摘】 圏論における「ふるい $R$ が $\{f_i\}$ を含む」ことの定義は、$\forall i, f_i \in R$ である。ふるいは右合成に関して閉じているため、いかなる単一の $f_i$ を右から経由する射($f_i \circ g$)も $R$ に含まれる。しかし、直和からの射 $p$ は、直和の成分への包含射 $k_i$ と合成して $p \circ k_i = f_i$ を満たすものの、$p$ 自身がいずれかの単一の $f_i$ を経由して書けるわけではないため、$p \in R$ を導くことは不可能である。

Gleasonの定理と正しい特徴付け

この論理的破綻を修正し、Gleasonの定理を正確に用いることで、$\mathbf{EDCompHaus}$ のカノニカル位相の真の姿、すなわち「有限clopen分割からの包含射」による特徴付けを得る。

(Gleasonの定理) 圏 $\mathbf{CompHaus}$ において、対象 $X$ が全射に関して射影的対象 (projective object) であることと、$X$ が超不連結空間であることは同値である。 すなわち全射 $p: Y \to X$ に対して、常に断面 $s: X \to Y$ ($p \circ s = \text{id}_X$)が存在する。
$\mathbf{EDCompHaus}$ において、有限結合全射族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i=1}^n$ を含む任意の被覆ふるい $R$ は、空間 $X$ の互いに素な有限clopen分割 $X = \coprod_{i=1}^n U_i$ に付随する包含射の族 $\{j_i: U_i \hookrightarrow X\}_{i=1}^n$ を必ず含む。
ステップ 1: 直和と全射の構成
被覆ふるい $R$ が有限結合全射族 $\{f_i: X_i \to X\}_{i=1}^n$ を含むとする。成分の直和 $Y = \coprod_{i=1}^n X_i$ は有限直和であるため再び $\mathbf{EDCompHaus}$ の対象となる。自然な射 $p: Y \to X$ は全射であり、各成分への包含射を $k_i$ とすると $p \circ k_i = f_i$ である。

ステップ 2: 断面とclopen分割の構成
$X$ は超不連結であるため、Gleasonの定理より全射 $p: Y \to X$ に対して断面 $s: X \to Y$ が存在する。 $Y$ は直和であるため各成分 $X_i$ は $Y$ においてclopenである。連続写像 $s$ による逆像 $U_i = s^{-1}(X_i)$ も $X$ のclopen集合となり、これらは $X$ の互いに素な有限分割を与える。

ステップ 3: 分割包含射がふるいに属することの証明
$U_i$ から $X$ への包含射を $j_i: U_i \hookrightarrow X$ とする。$s$ を $U_i$ 上に制限した写像を $s_i: U_i \to X_i$ とする。 任意の $x \in U_i$ について、合成写像 $(f_i \circ s_i)(x)$ を評価する。 $(f_i \circ s_i)(x) = f_i(s(x))$ である。$s(x) \in X_i$ に対する $k_i$ の作用は単に $Y$ の元とみなすことであるため、$f_i(s(x)) = p(k_i(s(x))) = p(s(x))$ となる。断面の性質より $p(s(x)) = x$ である。 したがって射としての等式 $j_i = f_i \circ s_i$ が成立する。 仮定より $f_i \in R$ であり、ふるいは右合成で閉じているため、右から $s_i$ を合成した $j_i$ は必ず $R$ に含まれる。 よって $R$ は包含射の族 $\{j_i\}$ を含む。

この結果から、$\mathbf{EDCompHaus}$ におけるカノニカル位相は、ザリスキー位相やコヒーレント位相における「開被覆」と全く同じ振る舞いをする、非自明で豊かな幾何学的構造を持っていることが厳密に証明された。

7. 結論と展望

本稿では、P. T. Johnstoneが "On a Topological Topos" において提起した、位相空間の圏を埋め込むための洗練されたトポスの構成について、その土台となるGrothendieck位相と普遍的有効全射の理論を完全にself-containedな形で再構築した。

圏論における「ふるい」の厳密な定義(右合成閉鎖性)に従うことで、直和からの全射が直接ふるいに入らないという繊細な罠を回避し、Gleasonの定理を用いた射影的空間の真のカノニカル位相の特徴付け(clopen分割)を導き出した。これらの議論は、代数幾何学から現代の凝集数学 (Condensed Mathematics) に至るまで、位相と圏論が織りなす強力な幾何学的インターフェースの基礎を成すものである。

参考文献